絵本『あっくんはたべられない』の感想をお寄せいただきました。

余計なものをそぎ落としたシンプルで分かりやすい言葉と、とても印象深い絵の中に様々な、そして強烈なメッセージが込められているのだなあと感じました。
私に感覚過敏はございませんが、学校の給食が食べられない時期があり、昼放課や掃除の時間にも一人で食べていた頃の記憶や感情が蘇ってきました。


私自身、今年はかなり偏食の多いお子さんを担任しており、子どもたちの姿と重ねながら拝見しました。
子どもたちの食の困難について、本人の思いを理解することはかなり難しい状況がある中で、あっくん本人のお気持ちやそれに対するお母様や周囲の方々とのやり取りを、食の困難を抱えている子どもたちの気持ちを想像しながら拝読しました。
「安心して食べるための支援」や「お母様の子育て記録」からは、自分の行っている支援は適切なのかどうかを考えたり、実際に担任する子どもの保護者からは「食の困難がひどく、今はかなり先の見えない状況だけれど、こんな風に立派に成長していくという様子を見て、希望が持てました」というお話をいただきました。
子どもたちは、まだ平仮名の理解が難しい子どもが多いのですが、イラストを見て色々と感じるところがあるようでした。特に食の困難について詳しく書かれた6ページのイラストを見て、「これはある、ない!」と自身の感じている困難を教えてくれました。

支援学校職員の方より


うちの小学2年生と4年生の娘たちに読んでみたところ、
「この絵は困ってるね」「お母さんの顔がこわいね」とか、
「好きな子がくれたおかずはなんだろうね。」とか、
口の感覚の描写は、「つるつるー」「じょりじょりー」と、一緒になって読んだり、楽しそうでした。
「はったつしょうがい、って何?」と、早速聞かれたり。
そうしたことを話すきっかけになり、とても良かったです。

団体職員の方より


何と言ってもあっくんの絵がいい。苦しみ、哀しみが胸に響きます。監修者やお母様、歯科医師などの取材もしっかりしていてほぼ半分を占める文章も納得できる素晴らしい絵本だと思います。小学校、中学校にも是非置いてもらって先生方に読んでもらえたらいいと思いました。

60代主婦の方より

知的障害特別支援学校小学部1年生のBちゃんは乳幼児期より周囲の物事にとても敏感なお子さんでした。
スクールバスの中で唾を吐いたり、友達を叩いてしまうこと、友達に何か気になることを言われると大泣きをしてパニックになってしまうことが毎日ありました。
嗅覚や触覚も過敏であるために、ビスケットやパン等の限定された物(安心できる物)以外は食べられないという食の困難も有していました。入学当初、給食の時間は食べることにまったく興味を示さず、ずっと遊んでいました。
そんなBちゃんに対して、教師はBちゃんの不安を少しでも取り除くことができるよう、Bちゃんの話をよく聞きながら関わることに努めました。
1ヶ月ほど経ち、学校生活に見通しを持ち始めたことや、教師との信頼関係が少しずつでき始めたことで、学校生活の中で落ち着いて活動できる場面が少しずつ増えてきました。
給食は時間をかけてゆったりと食事をする中で、友達と一緒に席について食事をすることができるようになりました。しかし、好きな牛乳やパン以外は食べず、少しでも「これ美味しいよ」と進めると、「食べないっ!」と言ってパニックになってしまうことがありました。今まで食べたことのある物も含めて、広がりが見られない日が続きました。親御さんもBちゃんの食べられる物をどうにか増やそうと、Bちゃんの食べられそうな物を作り、苦手な物でも一口は食べさせようと毎日奮闘されていましたが、いやいや口に入れて吐いてしまうことも多々あり、連絡帳にも「食事の時間は、毎日戦いで大変です」「お互い苦痛です」と書かれていました。
そのような中、絵本『あっくんはたべられない』をBちゃんの親御さんにお貸ししたところ、その後からスクールバスでの行動やパニックになってしまうことはパタリとしなくなり、穏やかに毎日を過ごせるようになりました。
給食では「いっぱい食べたい!」「よーし、食べるぞ!」等の前向きな発言が増え、今まで食べたことのない食材にも興味を示すようになりました。
これまでには考えられないほど食べられる物が広がり、人参・大根・きゅうりなどの野菜も食べられるようになりました。
食事中に褒められると、嬉しくなって、自分ですごい勢いでガツガツ食べようとする様子も見られるようになりました。新しい食べ物に挑戦するたびに、嬉しくなって「もっと食べる!」と言います。
連絡帳でも親御さんとBちゃんとの関わりを楽しむ様子が書かれるようになり、夕食時に吐いてしまうことは少なくなり、食べられる物も徐々に増えてきています。
絵本を読んで嬉しかったことについて、Bちゃんにお話を聞いたところ、「絵を見ながら、ママと(自分の困っていることについて)話したこと」がとても嬉しかったと話しておりました。
「話を聞いて欲しい」というニーズは、やはり強く求められているのだということを実感致しました。
Bちゃんは幼少期よりさまざまな場面で怒られた経験があり、悪いことをしていなくても「ごめんね、もうしないから」と謝ることが多々あります。食べることについても、「食べられないのは自分のせい」と感じてきたことが推測されます。絵本を読んで、親御さんと自分の困っていることについて話したことで、「食べられないのは自分だけではない」「自分が悪いのではない」ということを少しずつ感じ始めており、その安心感から食べることへのハードルも、少しずつ低くなってきていると思われます。
Bちゃんの親御さんからは、本人の困っていることについて、実はあまり詳しく分かっていないと感じたことや、幼少期に偏食がひどくとも改善していく可能性があることについて大きな希望を感じたといったご感想をいただきました。

支援学校職員の方より


貴重な意義のある作品で、資料であるなあと感じました。
発達障害についての本はいろいろありますし、私も以前、同じ職場に発達障害の同僚がいて資料を読んだりしました。しかし、「食」についての感覚過敏ということもあるとは、正直わかっていませんでした。
あっくんの特徴的な色づかい、そして強烈な表現なのにどこかユーモラスな、でもちょっと気持ちわるい感じもする絵、ガツン!とやられました。
一度、声に出して読んでみたのですが、6頁の絵の中に書き込まれた文字も声に出してみたら、ちょっとあっくんの感じている気持ち悪さを追体験した感じです。16頁の絵でほっとしました。
後半の解説もとてもわかりやすく、実際の当事者の声や保護者の体験もあって、具体的で身近に感じられて、とてもよいと思いました。
本やテレビでは類型的に語られることが多いですが、ひとりひとりの困難がそれぞれ違う、多様だということ。それを忘れちゃいけないな、わかったつもりになってはいけないな、と思いました。
「食」の困難について書かれた本はほとんどないから、絵本だし丁度いいわ、と私の図書館の同僚の児童書担当者が購入を決め、今日、納品され新着本の棚に並んでいました。たくさんの人に手に取ってもらいたいと思います。

図書館職員の方より


とても絵にインパクトがありました。保育に携わる保育者や保護者の方にも是非読んでもらって理解を深め、関心をもっていただけるとよいと思います。
子どもの健康を思って、つい、バランス良く、また、好き嫌いをしないよう励ましたり、時に促すことがあります。
正しい知識をもって、一人一人の子ども達と向き合っていきたいです。

幼稚園教諭の方より


弊誌の読者は学校給食を提供する立場ですが、食の困難を抱えるお子さんが増える中でどのような働きかけをしたらいいのか悩んでいる方も多くおられるようです。
菊間さんの食べ物への感じ方、つらい気持ちが、とてもよくわかる絵本で、ダイナミックな絵からも、切実感が伝わってきます。
高橋先生の解説や、菊間さんのお母さんの記録、田村先生のお話も大変参考になりました。

子供の食に関わる月刊誌編集者の方より


あっくんの食べ物や給食に対するストレートな気持ちが表現されており興味深く拝読しました。
また、高橋先生がおっしゃっている「必要なのは指導ではなく「支援」」というお言葉も心に残りました。
食べられない子どもの気持ちを聞き、子どもに寄り添った支援が必要なのだとご示唆してくださっており、そのような支援の在り方を現場に伝えなければと改めて思いました。

官公庁職員の方より